自分がお世話になった人が不運に見舞われるのは心が痛む。
がしかし、それが不運ではなく身から出た錆の場合はどうか。
今回は私の前職時代の社長が投資詐欺で騙された上で、借金20億円を抱えて自己破産した話を書き殴る。
自己破産とは何ですか?
・自己破産とは、債務の返済ができなくなった個人の申立てにより開始される破産手続のことです。
・個人である債務者が破産手続開始の申立てをしたときは、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます。
信頼していた前職の社長、詐欺に遭う
私は前職での業務経験をベースにして起業した。起業当初は前職から仕事を頂いたりもしていた。
前職の社長(以下、A社長という)は私が独立することを応援してくれて、投資もしてくれたし、色んな人脈を繋げてくれた。
私が起業して、会社を伸ばすことができたのは、A社長のおかげと言っても過言ではない。私はA社長のことを信頼していたし、非常に感謝していた。
参考:「凡人以下の劣等生で社会不適合だったが起業したら年商5億円ならイケた話」
独立後しばらく経って、そのA社長が投資詐欺にあって苦しんでいるという話を聞いた。
そして間もなくして、A社長は自己破産した。
唐突な話でかなりビックリした。
ただ、振り返って考えてみると「そうなる可能性もあったな…」と思う自分がいた。
「詐欺に遭う社長」とはどんな人物だったのか?
A社長の会社(=私の前職)は、私が入社した当初はかなり小さなベンチャー企業だった。20代の若いメンバーが10人弱で、年商3億円くらいの規模感だった。事業内容としては、Webメディア運営やWebマーケティング運用の事業を行っていた。
A社長は20代後半に起業して、会社をこれからドンドン成長させたいと考える野心家であった。その一方で、地方出身者らしい純朴な人柄もあり、優しく柔和な雰囲気を持っている人物だった。
なによりA社長が素晴らしかったのは、ユーザーやクライアントに価値提供して社会をより良くしたいと思っていた。
メンバーの献身的な活躍や新しい施策が上手く当たって、2年程で社員が約30人に増え、年商も30億円くらいまで成長した。
会社が大きくなるにつれてA社長も少しずつ変化していた。あまりポジティブとは言えない方向に…
A社長は事業のことにあまりタッチしなくなる一方で、M&Aによって会社を買収することや、それっぽい(儲かってないけど勢いがある感じ)Web系の会社に投資することに注力しはじめた。
会社が大きくなる上で、社長の役割が変わるのは当然だ。現場から離れて、高い視座で経営をしていく必要もある。
だがしかし、A社長は経営者として本質的に進化していたというよりも、表面的に‘経営者っぽく’なっていったフシがある。
ユーザーやクライアントに対して何ができるかよりも、A社長や会社が対外的にどう評価されているか?「イケてる」と見られているかどうかを気にしていた。
周りから「A社長すごいっすね!」「御社伸びまくりっすね!」など褒められると気持ち良くなって舞い上がってしまうのは人間誰しもあることだと思う。努力した事実もあるので達成感や充実感もあるはずだ。
でも…調子に乗って勘違いしてしまうと、変な方向にいってしまって危うくなる。
A社長はもともと何も持っていない純粋な人物だったからこそ、会社の急成長や周囲からの評判の変化に対して、本人がちゃんとチューニングできていなかったのかもしれない。
私を含め社員がA社長をもっと良い形で支えることができていたら、また違う結果になったかもしれない。
社長はどのように20億もの借金をつくり騙されたのか
A社長は会社が規模拡大する中で、M&Aや投資を行っていくが、効果的に実施できているとは言い難かった。
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- ウェットな人間関係で頼まれた
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- 褒められておだてられて財布のヒモが緩くなった
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- 自分の目利きを過信していた
昔から繋がりのある人に頼まれたら「ええかっこしい」で数億円で買収して子会社にしていた。夜職風の綺麗なお姉さんがお店を出したいと言えば、数千万円をペロッと出していた。優秀っぽくて元気な若手起業家がアツく語れば、自分が見出した良い投資先と勘違いしていた。
という感じなので、本業で稼いだキャッシュをどんどん溶かしていた。
そういった状況を打破したかったのか、かなり怪しい案件に乗ってしまったみたい。
詳細はここでは書けないが、いわゆる『ポンジスキーム型の投資詐欺』だ。それを‘経営者仲間’に紹介されて、20億円を突っ込んだらしい。
ここで問題だったのがA社長の資金調達スキームだ。
まず一つの問題が、会社のキャッシュをA社長個人に貸し付けていた点(本件は会社としての投資ではなかった)。会社は事業から生まれるキャッシュフローがあったし、外部からエクイティファイナンスもデットファイナンスもしていた。会社から10億円程奪っていた。
もう一つが、A社長が疑似ファンドっぽいものを作って、A社長の経営者仲間からお金を借りてプールして、A社長からポンジスキーム型投資詐欺商品にお金を突っ込んでいた。そのやり方で約10億円を集めていた。
見方を変えると、よくそれだけの資金を調達できたなぁとも思う。A社長の人望やトーク能力があったからなのか、これまで事業拡大してきたA社長の手腕が信頼されたのか、はたまたA社長にお金を貸した‘経営者仲間’たちも欲望の塊だったのか。
いずれにしてもポンジなので最終的にリターンが無くなって、借りたお金を返済できなくなり首が回らなくなった。他方では、会社の本業も低迷して収益悪化していた。
で、A社長は自己破産した。
※)上記の内容はA社長本人からではなく、第三者談なので必ずしも全てが正しい情報じゃないかもしれない
※)A社長は自己破産はしているが、刑事罰等の犯罪を犯したわけではないので法律違反はしていない
成功したその先にある「危うさ」
成功の定義は色々あるし、上を見ればキリがないが、それでも年商30億円の会社の経営者となり、役員報酬1億円取りながら経費も使いまくりだったら、世の中的には成功者の部類と言える。
これは私の個人的見解だが、そのレベルの成功者が一番「危うい」と思う。
年商20億~30億円の未上場のオーナー経営者というジャンル…
一般のサラリーマンよりも確実に収入も多いし、頑張ってのし上がってきたというプライドや自負心もある。
その一方で、世の中にはもっと大きな会社がたくさんある。創業社長の会社で年商100億円くらいの会社なら、地方にある地場産業の会社でも普通にある。
もっと言ったら「ソフトバンク・孫正義」とか「楽天・三木谷浩史」みたいなレベチな人たちもいる。しかも、孫さんとか三木谷さんってどう考えても成功者で桁違いの資産もあるにも関わらず、わけわからんレベルでリスク取ってまだまだチャレンジしている。
プライドや自負心がある一方で、劣等感や引け目もある。自信があるように見えて実は自信がないから、表層的な自己PRに走ってしまう。そういう経営者が自分を見失いがちな気がする。
イキリ車で六本木をうるさく走ったり、キャバクラで偉そうに武勇伝語ったり、経営者仲間(=おじ連中)で高級レストランで記念撮影してFacebookに嬉しそうに投稿したり、変な投資詐欺に引っ掛かったりしている。
A社長に関してもお世話になったし、信頼してたし、良い「おじ」だったけども、危うい方向に進んでしまった。
本当は起業した時の初心を忘れずに、自分にとって大事なことを継続的に頑張って一歩一歩進めば良かったはずなのに…
A社長にとって重要なことは「ユーザーやクライアントに価値提供して社会をより良くする」ことだった。社長の役割が変わっても、現場から離れても、この自分で決めた理念に向かっていれば、最終的にブレることはなかったはずだ。
たとえ一時の混乱や戸惑いがあったとしても。人と比較してしまい、成金おじ経営者を真似したり、勝ち負けに拘りすぎる時期があったとしても。
重要なことに集中していれば、周囲の評価と自分自身を正しくチューニングして、地に足着けて前進することができたのでは?と思う。
〆のことば(メタメッセージ)
自分の頭の中に溢れ出る文章という洪水を上手にダム化できていない。
心苦しい気持ちでいっぱいだ。
がしかし、1人でもこの文章を面白いと思ってくれたならうれしい。
奇跡的にこの文章を面白いと思って頂き「コイツはどんな奴なんだい?」と興味を抱いた人がいたら、現X(旧トゥウィッター)でコンタクトして頂ければです。よろしくお願いします。
ChooseHappyLifeという「幸せな人生を選ぶために必要な情報(お金、仕事、恋愛、健康、旅行など)を提供する記事メディア」を運営しようと思っていたけど、やっぱりただの日記。なんか奇跡が起きた場合は、ぜひ読んでみてください。https://t.co/qHVOouwZqr
— 高木直也|ChooseHappyLife運営 (@Choose_H_Life) March 27, 2024