私の自伝的物語は「凡人以下の劣等生で社会不適合だったが起業したら年商5億円ならイケた話」の記事で紹介した。ここでは比較的ポジティブなストーリーを切り取ってお伝えした。
人生にはポジティブだけじゃなく、ネガティブなことも起きる。私は起業して小さな成功を手に入れたが、その後パニック障害になってしまい死ぬほど辛い体験をした。今回はその話をしたい。今回も日記だ。正解を出すことも、他人を啓発することもしない。クソ小説と思って嗜んでくれ。
※パニック障害に関する医学的なことはちゃんと自分で調べてほしい
※もしこれを読んで「自分も同じ状況だ」という場合、病院等で専門家と話をすることを推奨する
「何でメンタル疾患に?」30代半ばで異変を感じる
私は30歳で起業した。起業してからは、就業時間という概念などなく、寝る時以外は仕事に費やしていた。創業時はサバイブするのに必死だったし、経営が安定してきても「何でもやる」「常に稼働する」というスタンスだった。熱中している状態を楽しんでいた。忙しくてキツくても、売上が増えていくのが嬉しかった。自分の会社がクライアントに評価され、社会にも貢献できていると自負していた。
思い返せば、私は社会人になってからもずっと仕事中心だった。優秀なビジネスパーソンではなかったが故に、「起業する」という目標に向けて、ずっと仕事のことを考えて動いていた。サラリーマン時代からデフォルトで毎日14~15時間は働いて、土日もだいたい仕事をしていた。1社目(証券会社勤務)の時は睡眠不足のせいか電車で倒れたことが何回かある。
「仕事は‘頑張る’もの」が私の基本的行動指針として沁みついていた。その「頑張り方」というのがパワー系だった。要するに体力や気力、時間というリソースを使うやり方だ。
独立後、34歳になってちょっと経ったくらいに異変が起きた。歯医者や美容室で座っていると、何故か不安が襲ってきて頭から血の気が引くような感じがする。会議室での打合せで、顔見知りの取引先相手なのに緊張した時のように心臓がドキドキする。
ある打合せ中に、貧血みたいになって気を失い倒れてしまった。その時はすぐに目が覚めて「いや~昨日飲み過ぎたせいかもしれません!ハハハ…」と笑ってごまかしたが、顔が真っ白になっており、気分も最悪だった。
しまいには平時でも、動悸やめまい、吐き気がするようになった。なんかずっとソワソワして落ち着かない。ずっと不安感や緊張感がある。それが続いてまともに眠れなくなっていた。
とにかく一番キツかったのは、室内で人とコンタクトすることだった。だから、明日人と会う予定があると、前日の夜から異常に緊張して動悸がして、「また気を失って倒れたらどうしよう」と不安に襲われ眠れなくなった。
「これは絶対に自分の身体がおかしくなっている」と思って、近所の大きめの病院に行った。血液検査とかしてもらったが、特に異常はなかった。
病院の先生に言われたのは意外な言葉だった。
メンタルの問題かと思う
精神科か心療内科に行った方が良い
実は、病院で先生に診察してもらっている途中でも気持ち悪くなって、倒れそうになったので、横にならせてもらっていた。
「何で俺がメンタル疾患に…??」
と青白い顔をしながら思っていた。
「パニック障害と診断」それを認める
正直、すぐには精神科・心療内科に行くことができなかった。当時は自分がそういったメンタル的な不調があることを認めたくなかった。精神的に弱い人間と認めるようで嫌だった。(今ではその考えがそもそもの認知バイアスにかかっていることを理解している)
別軸の気にしていた点としては、自分の会社のことだ。会社の業績は順調に伸びているのに、自分の問題で止まってしまうのが嫌だった。取引先等の各先と進めるプロジェクトもあり、自分が足手まといになるようなことも避けたかった。
インターネットで自分の症状を調べると、色んな情報が入ってきた。
自律神経失調症、不安神経症、適応障害、パニック障害、迷走神経反射、うつ病…
この頃には、人混みや電車、狭く感じる室内にいくとヤバイんじゃないかと思って、自分が危険意識のある場所を避けるようになっていた。
この時に、信頼できる友達や親とも電話で話をして、自分の状況を伝えた。そうすると「職場でもそういう人がいたが、しばらく休んで復帰している」とか「別に無理する必要はない。人生長いし休んでもいい」という意外なレスポンスをもらった。
それで自分もすごく気が楽になった。‘頑張らなくていい’のかと思った。もう別にダメだったらしょうがないと思った。メンタルヘルスの病院に行って、そこで倒れてもまぁその時はその時なので、とにかく一回病院に行くしかないと思った。
心療内科に行った。結果、パニック障害と診断された。「典型的なパターンです」と言われた。「メンタルが弱いからとかじゃなく、真面目で精神的に無理をする性格だからこそ」とのことだった。
結果的に心療内科に行ったのは英断だった。紅の豚みたいなビジュの女医さんだった。その先生にカウンセリングもしてもらってめっちゃ気が楽になった。薬を処方してもらった。パキシルといういわゆるSSRIとベンゾジアゼピン系のやつ、あと睡眠導入剤も出してもらった。
ここから約2年間はこのパニック障害と向き合うことになる。
「パニック障害の原因」直接要因と背景にあった考え方
パニック障害とは「前触れなく、動悸や息苦しさ、めまい等の症状が出るパニック発作を繰り返し、そのせいで再発に対して過度に心配になって(予期不安)、外出などが制限(広場恐怖)される病気」だ。
実は未だに明確な原因は分かっていない。脳の異常反応ともいわれている。最初にパニック発作が起こる原因は過労やストレスからといわれている。強いストレスを感じてしまうと脳内の情報伝達に必要な神経伝達物質と呼ばれる物質のうち、特にノルアドレナリンが増加し、神経が異常に興奮してしまう。これが起きると、ストレスに対する防衛反応として強い身体反応(動悸や呼吸困難など)が起こるらしい。
自分の場合も「働きすぎ」「自分を酷使しすぎた」が原因だった。働きすぎによって睡眠時間が減る。夜中まで働くので生活リズムが乱れる。四六時中パソコンやスマホのブルーライト画面を見て仕事をしている。睡眠不足にも関わらず、飲み会で朝まで飲む。さらに当時は健康に一切気を遣ってなかったので、食生活も適当。タバコも吸いまくりだった。自律神経は乱れまくりだった。
パニック発作が起きるようになった一番の直接要因は、睡眠問題が大きいと思っている。あの頃は脳がずっと疲れていた。寝て起きてもずっとしんどかった。
根底には考え方の問題もあった。仕事は無理してでも頑張ってやるものという。睡眠時間を削ってでもとにかく働いて結果を出す。自分の能力が低いからこそ、量でカバーするしかないと考えていた。自分の実力を信じていないから、とにかく努力量で補わないといけないというメンタリティだった。それで20代はイケたけど、30代半ばになってきて体力が低下してきた。
なまじっか会社経営が上手くいって、ミニ成金になり、「自分も一丁前の経営者だ」という自負心も出てきていた。その一方で、自分の同世代の経営者が、スタートアップのキラキラした世界で「資金調達しました」「売却しました」「ヒィーアッ!」とかブイブイいわしていることに対して比較思考に陥り、劣等感を覚えたり悔しいという気持ちになったりしていた。
この考え方が自分を変な方向に向かわせていた。
自分も経営者として特別な人間になったと勘違いしていた。
普通とは違う無茶なことをしなければならない
他人に見下されないためにお金を稼ぎ、力を示す
そんな風に考えていた。今思うとクソだ。最高にダサい。当時は自分軸を完全に見失っていた。
いずれにしても、そのせいで最も大切な自分の「健康」を犠牲にしていた。
死ぬほど辛かった。絶望した。
病院でのカウンセリングや自己分析などによって、パニック障害になった自分の状況や要因などを頭では理解できた。がしかし、体の状態はすぐには治らなかった。不安や緊張、焦燥感はずっと続いた。セロトニン不足状態だった。
「ここまで頑張ってきたのに、何でこんなことになったんだ?」とイラ立つ気持ちもあった。仕事に関しては、社員にも取引先にも状況説明して、一部の案件をストップしたり、オンライン対応だけにしてもらった。人に迷惑をかけているという申し訳なさがあった。
人生で一番辛かった。絶望していた…。
泣きそうになったりもした。というか泣いていた。「ヤバい」「もう俺は終わった」と落胆していた。
絶望中は、コンビニで買い物することにさえビクビクしていた。電車にちょっと乗るのにも冷や汗をかきながら必死だった。
そんな自分を改めて客観視してみると、何故か笑えてきた。「偉そうにビジネスのことを語ったりしてたけど、俺は何もできないカスだ」と思って笑えた。もう失うものはないと思えた。あきらめることにしたら、良い意味でふっきれた。
自分にとって絶対に大事なものだけを残して、それ以外は無くなってもいいと考えるようにした。これまで得たものが無くなったとしても、自分の経験とか頭の中にあるものが残っていれば、それで良いんじゃないかと思うようにした。もっと言うと、自分が生きていればもう良いんじゃないか?「このように生きなければならない」とかどうでもいいって思った。
どうやってパニック障害を克服し復活したのか
頭では理解したし、前向きに復活したいと願っていた。でも、どうしても身体反応が出る。すぐには治らないと思い、腰を据えて粘り強く闘おうと思った。いや闘うというか、今後パニック障害と共存するとして、自分ができるようになりたいこと、できなくても仕方ないことを書き出して、できるようになりたいことに向けて着実に進めていった。とにかくその時にできることは何でもやった。もちろん無茶や無理はしない範囲で。
健康になるためには、「睡眠」「食事」「運動」の要素があり、これらが相互に関連している。具体的には以下のようなリハビリ活動をした。
- ・規則正しい生活
- ・早寝早起(10時に寝て、6時に起きる)
- ・朝散歩
- ・できるだけ午前中に日光を浴びる
- ・三食しっかり食べる(特に朝ごはん)
- ・タンパク質をしっかり摂取する
- ・高糖質を避けて、血糖値を急激に上げない
- ・質の悪い油を避けて、オメガ3脂肪酸を摂取する
- ・ビタミンDと亜鉛のサプリを摂取
- ・夕方以降はリラックスして過ごす
- ・腹式呼吸
- ・瞑想
- ・禁煙
参考:アラフォーIT社長が実践する心も身体も強くなる最高の健康ルーティンの話
やらなくて良かったこともある。ツボとかイメージトレーニング的なやつは無意味だったと思う。でも、とにかくやってみるってことは良かった。精神的な話よりも、肉体的な健康法を粘り強く続けるべきだと思う。
認知行動療法的なのはアリだった。「暴露療法」ともいうらしい。危険意識はあるがイケそうと思える場所から、徐々にチャレンジした。「不安に思うが行きたい所」リストを作って、成功したら〇を付けて、一つひとつクリアしていった。
SSRIの薬(自分はパキシルを飲んでいた)はかなり有効だった。大きく変わったと思う。なので、自分の考えでは病院は絶対行った方が良いし、早めに投薬治療をした方が良いと思う。ベンゾジアゼピン系の薬は、依存性にビビって結局1回も飲んでいない。
あと、パニック障害を克服する上で、大事と思った考え方は「パニック障害を完治させる」と必要以上に意気込まないこと。
パニック発作は全く異常な身体症状ではなく、人間にとって普通に起きる現象だ。一生のうちに1回だけパニック発作を起こす人は、9人に1人(全人口の約11%)。その中の4分の1から3分の1程度の人がパニック発作を繰り返し、パニック障害へと進展するといわれている。パニック障害の頻度は、全人口の1.5~4.7%で、決してまれな病気じゃない。
動悸やめまい、過呼吸とかのパニック発作ってそんなに珍しいことじゃない。不安や緊張も普通の気持ちだ。
だから、あまり過度に気にせずに「また来ましたね!パニックさん」くらいのスタンスでパニック発作と向き合って受け入れることをおすすめしたい。
啓発はしないけど、伝えたいこと
体験談としてお伝えすると、パニック障害は絶対に治ると思う。というか場合によっては治らなくても良いと思う。自分と向き合いながら、自分が出来る範囲で世界を楽しめば良い。
常にパニック発作が出るわけじゃなく、大丈夫な状態があるはず。その大丈夫な時間を増やすようにして、その時間を楽しめばいいと思う。
はっきり言って、健康が一番だ。体が資本とかそういうのじゃなく、健康な状態でいること自体が幸せだと思う。楽しい気分で美味しいごはんが食べれたらそれで良い。もしかしたら、単純に不幸を感じたことで幸せの基準が下がっただけかもしれないが、別にそれでも良いと思っている。
柔軟な思考も大切だと思った。他人と比較しない。こうしなければならないなんてない。人生は何でも良い。思い込みに捉われない。自分が正しいと思わない。メタ認知能力を高める。雑魚でも良い。上手くいくことばっかりじゃない。自分にとって大事なことに集中する。
まぁ、だいたいそんな感じだ。ほな。
奇跡的にこの文章を面白いと思って頂き「コイツはどんな奴なんだい?」と興味を抱いた人がいたら、現X(旧トゥウィッター)でコンタクトして頂ければです。よろしくお願いします。
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— 高木直也|ChooseHappyLife運営 (@Choose_H_Life) March 27, 2024